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担任はさっさと保健室から出て行ってしまった。それを尻目に、額田先生はカーテンを少しだけ開けて、首を傾げる。
このひとにそれを訊かれるのは何となく気分が悪い。俺は、その気分を外に出さないよう努力しながら、かぶりを振った。
「……額田先生には、関係ないかと」
思ったより声が小さくなってしまった。本能的に感じる“このひとには勝てないんじゃないか”という弱気がもろに出てしまった。
すると、額田先生はクスクスと肩を竦める。
「お前ね、ハッタリでもいいから、そういうときはきっぱり言っていいんだぞ」
「……言ってから失敗した、と思いました」
「ハッタリだってバレバレだっていいんだよ。言ったもん勝ちなんだから」
珍しく先生らしいようなそうでないようなことを言いながら、額田先生は穏やかに微笑む。すると、カラカラ……とドアが控えめに開けられる音がした。
カーテンの向こうの額田先生はそっちを見ながら、おっと驚いた顔をする。
何かと思ってその横顔を見つめると、額田先生はカーテンの中を覗き込むようにして、人差し指を口元に当てて小さく「しっ」と言った。
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