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聞いた瞬間、額田先生は肩を揺らして笑った。吹き出して笑うのを堪えて、でもやっぱり堪えきれず漏れた笑いだ。
額田先生が笑いたくなるのも、無理はない。もともと高校生の俺なんかには、分不相応な恋愛だったんだから。
さぞ馬鹿にされるんだろうと思って俯くと、頭にポスンとわずかな重みがのしかかる。
目だけでちら、と額田先生を見上げると、彼は複雑な笑みを浮かべていた。
「お前、その年齢で恋の終わりが来る前に悟るとか、やめろよなぁ」
言ってることとは裏腹に、額田先生の声は俺を労わるものだった。
……大丈夫だって、言ってるのに。
俺が視線をそらすと、頭に乗せられた手がわしわしと動いた。
「ちょっと、先生。やめて」
「泣けとは言わないが、撫でさせろ。どうにも俺の気が治まらん」
「あー、俺も俺も!」
「ウザッ!」
それでも嫌がる俺の頭をぐしゃぐしゃになるまで撫で回した額田先生の言葉の意味はよく判らなかったけど。
何となく、俺と流華さんを黙って眺めていたこのひとにも、何か抑えていた思惑があるのかも知れないっていうのは、判った。
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