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別に俺を見つけられなかったならそれはそれで構わない、と思っていたのだけど、西川さんはわりとすぐにやって来た。
息を弾ませながらやって来た西川さんは、俺の傍まで来ると一言小さく「ごめんなさい」と呟いた。
放課後にしよう、と適当なことを言ったのは俺だし、彼女を教室に置いてさっさと出て行ったのも俺だし、謝ることはないと思うんだけど、どうにも西川さんらしい。
もじもじする西川さんを見ながら、俺は肩を竦めて笑った。
「歩きながら話そっか」
コクン、と頷く彼女を小さくて可愛いな、と思いながら、俺はロードレーサーを引っ張り出した。
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冬のにおいはとっくに充満しているのに、雪が降るのにはまだ何か足りない気がしてしまう。冷たいアスファルトの歩道を歩きながら、西川さんは口を開いた。
「お姉ちゃんから、聞いたよ。坂田くん、あの女のひとと別れた、って」
やっぱり、そういう話か。
別にげんなりしたわけではないけど、ある種の諦めのような感情が胸に広がった。
俺は、誰と誰が付き合ったとか別れたとか、あんまり興味はないんだけどな。
「それって、さなえさんは流華さんと仲良くしてるってこと?」
「うん。疎遠になってた時期もあったみたいだけど、最近また」
「……ふーん……」
女のひと同士の繋がりというのは、やっぱり理解しがたい。
高校生の長倉さんと西川さんですら、腹に別の気持ちを抱えながらも仲良くやっている。
もっと大人であるさなえさんと流華さんが仲良くやれるのも不思議はないだろう、けど。
すると西川さんは、俺の感情を読み取ったかのように一瞬目を見開いて、あの……と言いながら俯いた。
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