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「あの、あのね。私、お姉ちゃんに話したことがあって……坂田くんのこと」
「俺の話? 何?」
「坂田くんのこと好きなんだけど、どうしよう、って」
思わずロードレーサーを取り落としそうになった。姉妹っていうのは、そんな話までするもんなんだろうか。
いや、恋愛話くらいしたっていいんだけど、その、俺は西川さんからすれば、姉と寝た男なわけで。
さなえさんからすれば、妹が自分の昔の男を好きだと言い出して……って、ああ。身も蓋もない程そのままなんだけど。
……ひとりっ子の俺にはさっぱりだ。
「そうしたら、お姉ちゃんが色々話してくれて、それで……っていうか……あの、ごめんなさい……」
どんどん不可解だ、という表情を隠せなくなっていっている俺に気付いてか、西川さんはまた謝った。
「いや、謝らなくてもいいって」
「だって、あの……わ、私が変に関わるから、そうなっちゃったんじゃないかって……」
西川さんの言葉に、心の裏側で少しだけ苛立ちが疼いた。
関係ないだろ、という八つ当たりに切り替えてしまってもあるいはよかったのかも知れないけど……。
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