あの日、どこかに置いて来たもの。

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   冬休みはわりと忙しく過ごした。  反対する両親の反対を押し切って、とりあえずバイクの免許を取ってきた。  登下校には絶対使わないという妙に硬い約束をさせられて、何故かバイクを買い与えてもらったけど。  もともと学校に通うのに使おうと思ったわけじゃないから、どっちでもいいんだけど。免許を取ったのだって、単に気分転換だったし。  バイクがうちに届けられた日、狙い澄ましたように斉木がやって来て、べたべた触るから手垢がつきまくった。  なんか腹が立って、遠慮なく奴のケツを蹴り上げてやった。  打たれ強い斉木は笑いながら俺に謝って、手垢だらけのバイクを磨き上げて帰っていった。とりあえず触りまくりたかっただけらしい。  そうしているうちにその年初めての雪が降って、気付けば本格的な進路調査が始まるような時期になっていた。 ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚ 「期末テストが終わった途端、何だその頭」  ケラケラと笑う額田先生は、生活指導の先生の苦い顔が浮かぶ、と肩を揺らして笑った。  別に狙ってやったわけじゃないですよ、と言うと、彼は更に笑った。  テストが終わって家に帰ったあと、最近ほったらかしすぎてすっかり伸びた髪をどうしようかと、洗面台の前で少し考えていたときのことだった。  自分の髪が猫毛であることは自覚していたけど、完全な黒髪でないことに気付いたのは初めてだった。  光に透かすと、赤に近い茶髪。  何でもないことではあるんだけど、長年黒髪だと思っていた自分としては、かなりショックだった。  それに、頬にかかるまで前髪を伸ばしたのも初めてで、こんなふうに自分の髪をまじまじと眺めるのは生まれて初めてかも知れない。  その瞬間、真っ黒ではない自分の髪に急にストレスを感じて、そのまま家を出たのだった。で、駆け込んだ美容室でプロにお任せした結果が、今の俺の状態だ。 「お前、それバレンタイン前にやらなくてよかったな。倍はチョコ集まってたかも知れないぞ」  俺の妙な理屈に納得しながら、額田先生はまだ笑っていた。 .
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