あの日、どこかに置いて来たもの。

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   でも、確かに生活指導の先生からすればじれったいだろう。  俺を生活指導室に引っ張っていったら、その10倍以上の人数を説教しなくてはなくなるだろうから。  髪の色が明るくなったって言ったって、その程度なんだけど。  今の高校生の髪よりは全然暗い色だから大丈夫よ、と担当してくれたお姉さんは笑っていたけど、それでも今までの俺の髪よりはずっと明るい茶色になっている。 「チョコレート欲しさに生きてるんじゃないですからね。甘いものは嫌いじゃないですけど」 「ま、そりゃそうだ」  そう言いながらも肩を竦める額田先生が、女生徒からのチョコレートを全部断っていたのを、俺は知っている。  生徒からプレゼントなんて貰ってはいけない、なんてもっともらしい理由をつけてがっかりする女生徒をことごとく保健室から追い出していたっけ。  他の先生の目が怖い、とかこの男にはあり得ない。ただ佐奈さんのご機嫌を損ねない為だろうと思う。  色々どうなんだろう、と思うことはあるけれど、俺はこのひとのそういうところが単純に好きなんだろうと思う。斉木の目には、嫌味に映ったらしいけど。 .
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