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ごく自然に流れて触れて絡み合って、風に揺られて解けていくような。
自然の中で起きた現象なら、いちいち手垢をつけて汚すこともないだろう。
ぼんやりとそんな抽象的なことを考えていると、流華さんの額が肩に押し付けられた。
「恋愛感情が残ってるとか、そんなんじゃないの。ただ……若気の至りで、別れる時“30になってもお互い相手がいなかったら結婚でもしようか”って約束しちゃって……腐れ縁っていうか」
「それだけで、充分特別な人じゃないか」
俺が肩を竦めて笑うと、少しだけ手に力が込められた。
「そんな約束するってことは、初めてのひとだったんでしょう?」
やんわりと俺がそう訊くと、流華さんはわずかに頷く。
その気になれば誰だって、何度だってできるのが恋、だと思う。
……けど、最初と最後のひとは特別なものだよ。きっと、誰だって。
「流華さん」
「……ん?」
「さっきのセックス、気持ちよかった?」
答える代わりに、背中をドン、と叩かれる。
俺はそれに低く笑って返すと、手を握り締めてくれる白い手の甲に、ファーストフード店のストラップがぶら下がった鍵をそっと乗せた。
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