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こいつには何度もロードレーサーだよ、と言ってるのに覚えないのは、つまり覚える気がないからだ。わざと言ってるような気もするけど。
「……だるいだけだよ、気にするな」
それでも何だか納得のいかない顔をして、斉木は肩を竦める。
こいつは昔から異常に嗅覚がいいと思う。特に俺のことに関して。
判っていなければ、妙な趣味かと思ってしまいそうだけど。クラスのあの地味な3人組のように。
「まあ、お前のテンションってもともと低かったっけ。最近が機嫌よすぎるくらいだったか」
「……そんな、傍目に見て判るくらい?」
幼なじみにそんな風に言われることが何だか気恥ずかしくて、思わず訊き返してしまった。
すると斉木はやっぱり俺を見下ろして、小さく口角を上げる。引っかかったな、とばかりに。
「そそ。だから……機嫌がいいときは何が起きたか。元に戻ったときは何が起きたか。俺には判っちゃうね」
やっぱり、気持ち悪い。
俺が小さく溜め息をつくと、斉木は何故か嬉しそうに肩を竦めた。
クラスの女子がたまに誰がSだMだという話を未だにしているけど、俺は斉木の方こそ完璧にSだろうと、こういう時に思ってしまう。斉木が俺の顔をふと覗き込む。
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