あの日、どこかに置いて来たもの。

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   普段は淡白なふりをして、実際それが好きで堪らなくて、そればかりしていたいだなんて、一体俺は何なんだろう。  制御できなくなって溺れすぎてしまわないように、なるべく手を出さないようにしてるだけの話じゃないか。  そっと腕を緩めると、愛美さんは少し赤い顔をして、慌てて俺から離れた。  まだ無防備な彼女に付け入る隙があるってことに気付いた瞬間、上がりそうだった体温が落ち着きを取り戻す。  大丈夫、今慌ててことを進めなくても、たぶん平気だから。  それは身体の奥底から発せられた声で、果てしなく頼りない勘みたいなものだけど。  初めて口をきいたときも、何となくそんな予感はあったけど……俺はきっとこのひとと絶対に寝ることになる。  さなえさんのときも、流華さんのときも、そういう予感があった。そして、ことごとく当たった。  慌てるのは性に合わない。俺は、このひとが自ら手の中に落ちてくるのを待てばいいんだと思う。  恥ずかしがって慌てる愛美さんを、冗談を交えてからかった。 .
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