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そのひとは、いったん頭の上に当たって足元に落ちた紙クズを見て、首を傾げながら軽く髪をかき上げた。
そして、紙クズを拾い上げると、あたしの方を見る。
──髪の色によく似た、少し色素の薄い、アンバーの瞳。
その瞳が、何も挟まず真っすぐにあたしを見たのは初めてだ。
だから、このひとがこんなに綺麗な目をしてるだなんて、初めて知った。
「ぎゃー、ごめんなさい、それ俺が投げましたー!」
窓から身を乗り出して手を合わせながら、収がぺこぺこしている。
目の前のひとは、収に向かっていいよ、と笑って手を振って見せた。
「それ、その子に預けて下さい、捨ててもらうことになってるんで」
構わず収は言い、もう一度そのひとにぺこりと頭を下げると、実に自然な動作で引っ込んで行った。
「今の、生徒会長だろ。きみも、2年?」
高くなくて、低すぎもせず、高校生にしては包容力のありそうな声、だと思った。
あたしの聴覚を全部持って行ってしまうような、いい声。
「そ、そうです。2年の、織部です」
「そっか。織部さん……」
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