明るい髪の人

4/21
311人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
   そのひとは、いったん頭の上に当たって足元に落ちた紙クズを見て、首を傾げながら軽く髪をかき上げた。  そして、紙クズを拾い上げると、あたしの方を見る。  ──髪の色によく似た、少し色素の薄い、アンバーの瞳。  その瞳が、何も挟まず真っすぐにあたしを見たのは初めてだ。  だから、このひとがこんなに綺麗な目をしてるだなんて、初めて知った。 「ぎゃー、ごめんなさい、それ俺が投げましたー!」  窓から身を乗り出して手を合わせながら、収がぺこぺこしている。  目の前のひとは、収に向かっていいよ、と笑って手を振って見せた。 「それ、その子に預けて下さい、捨ててもらうことになってるんで」  構わず収は言い、もう一度そのひとにぺこりと頭を下げると、実に自然な動作で引っ込んで行った。 「今の、生徒会長だろ。きみも、2年?」  高くなくて、低すぎもせず、高校生にしては包容力のありそうな声、だと思った。  あたしの聴覚を全部持って行ってしまうような、いい声。 「そ、そうです。2年の、織部です」 「そっか。織部さん……」 .
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!