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ますますへえ、と溜め息が出そうになる。
うちの祖父は何をしてる人だったっけ。なんて考えなくちゃ思い出せないくらい、俺には縁遠い親戚関係だ。
絵に描いたような核家族っぷりに気付いて、思わず苦笑してしまいそうになった。
「じゃあ、俺はこれで」
「あ、あの」
「ん?」
今来た道を戻ろうとすると、織部陽香の手が俺の制服の袖口を軽く掴んだ。
びっくりして振り返ると、彼女はやっぱり俯いていた。
「……織部さん?」
「は、はいっ」
やんわりと、掴まれた袖をそのままに振り返る。
俺は少し前屈みになって、彼女の顔を覗き込んだ。
「俺は──すごく、女の子らしくていいと思うんだけどね。男の前でそんなにあからさまに恥ずかしがってたら……誤解されるよ」
え、と彼女は顔を上げる。
これが昔付き合ってた彼女相手なら、素早くキスしてしまっていたな、と思った。
「男って馬鹿だから。目が合う度にそんなふうにされたら、俺のこと好きなのかな、って誤解する」
ぽかん、と織部陽香の表情が止まる。彼女はまた、ぱちぱちと瞬きを繰り返した。
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