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「ひとつ、訊いてもいいですか?」
用を足したあと、ちいちゃん──篠崎千歳は、手を洗いながら鏡を見据える。
ちいちゃんの後ろに立っていたあたしは、必然的に鏡の中の彼女と目が合った。
「え? なに?」
ただならぬ緊張感に、あたしは内心ドキッとする。
彼女が何を言い出すつもりかなんてまったく予測がつかなかった。
すると、ちいちゃんは再生紙のタオルでさっと手を拭き、あたしに向き直る。
「……織部先輩、会長のこと、どう思ってるんですか?」
何を訊くんだ、というのがどうやら顔にも出てしまったらしく、ちいちゃんはきゅっと口唇を噛み締めた。
「お、幼なじみとか、クラスメイト以上の感情は……あるんですか?」
胸元で、両手をぎゅっと握り締めるちいちゃん。
「ないよ、そんなの」
「……本当ですか?」
「うん。本当」
きっぱりとそう言い切ると、ちいちゃんはハア……と大きな溜め息をついて、洗面台に軽くもたれた。
「やだ、すみません。いきなり織部先輩にこんなこと……すみません。ホント、恥ずかしい」
「……収のこと、好きなの?」
ちいちゃんはばっと顔を上げると、その頬を赤く染めた。そして、潤んだ瞳であたしを見つめる。
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