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「好きな人の前だと、昔からそうなんです。意識しちゃって、大口開けられなくて」
「……そういう、もの?」
「え? あ、はい。先輩はないんですか? そういうの」
ついさっき生まれて初めてそんな感覚味わいました、なんてことを屈託なく口にできる性格なら、もっと思い切りよく色々できそうな気がするけど。
別にあたしの答えを期待してそう訊いたわけではないらしく、ちいちゃんはハア……と大きく溜め息をついた。
「周りの友達なんてみんな、気付いたら彼氏ができてた、ってタイプばっかりなんで、全然参考にならなくって」
「そうなの?」
「そうなんです。こっちは本気で悩んでるのに“ちい、マジで処女くさい”って笑われちゃうし」
思わずコケそうになった。……そういう問題、なのかな。それって。
「……に、日本人の女の子にはあってしかるべき恥じらい、ってやつじゃないのかな。そういうの……」
「ですよね! 私も、そう思います!」
やたら真剣な顔で頷きながら、ちいちゃんは部屋のドアノブに手をかける。
「くれぐれも今の話、会長には内緒でお願いしますね!」
「言わないったら」
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