240人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
その光景を見るなり、ぱちぱち……と何度も瞬きを繰り返した。
明日以降の予定をさらった後終礼を済ませて、あたしは収のカバンを確認してから教室を出た。
収に何か頼まれて生徒会室へ行くのは、初めてじゃない。
行き慣れてない場所に対して気後れする、という感覚も全然なかった。
だからあたしは、何の気なしに「失礼しまーす」と言いながら引き戸を開けた。
──するとそこに、生徒会メンバーに混じって、なぜか坂田さん。
何度も瞬きをして、その状況を確認する。一番奥にいた収が「サンキュ」と言いながら立ち上がった。
「陽香、時間ある?」
「え?」
「今、昼メシの買い出しのついでにお前の紅茶も頼んだんだよ。後輩に。食べて帰ったら」
ちら……と収の隣に座っている坂田さんの顔を見る。
すると彼は、卒業証書の入った筒を手の中で弄びながら、小さくあくびをしていた。
ネクタイがきちんと締められているのを見て、鎖骨……と少し残念な気持ちになる。
人知れず恥じ入って、あたしは無言で頷いた。
.
最初のコメントを投稿しよう!