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「佐久間、さっきの店員さんまだいるかな?」
「え?」
「迷惑ついでに、忘れられっぱなしの傘がないか訊けないかな」
佐久間の顔が、ぱっと明るくなった。すぐに「もらって来ます!」と踵を返す。
佐久間と話していると、“打てば響く”という言葉の意味を実感する。
相手が何を求めているのかを一言で察するというのは、頭がいいからということだけじゃない。
やつが生徒会長になったのは、あの才能が大いに役立った結果なんだろうな、と思った。
佐久間のあとを、ちいちゃんとかいう小さい子がちょこちょことついていくのを視界の端に入れながら、斉木がいないことに気付いた。
「斉木は?」
斉木と同じ部屋にいた1年生の子に訊くと、トイレに行ったと教えてくれた。
やれやれ、いつもこうだ……と思いながら溜め息をつく。団体行動を意識なく乱すというか、マイペースの塊というか。
あれでもやつなりに色々考えて行動しているというのは認めるけど、考えて欲しいところでスコッと手抜きをするあたり怠慢だと思う。
すると。
「わああー!」
少しエコーのかかった声が響いて、その場にいた全員が驚いてビクッとした。
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