軽い眩暈が友達で。

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  「いえ、そういうわけでは……」 「悪い、とか思ってるなら気にしないの。こっちが言い出したんだから」  ぱちぱち、と彼女の長い睫毛が上下した。そして、また俯いて「はい」と頷く。  もし俺がこの子に惚れてたら、今のはかなり効いた。  何とも思ってない俺がこうなんだから──と、更に心配が頭をもたげる。  この仕種で、“この子は俺のことが好きなんだな”と誤解した男が、勝手にその架空の気持ちに応えるように織部陽香に惚れたら──危ない気がする。  注意するのはよけいなお世話だろうか、と悶々と考え込んでしまった。  そのまま黙って歩いていると、織部陽香は一歩前に出る。 「あ、ここなんです、うち。坂田さん、本当にありがとうございました」  織部陽香が指し示したのは、わりと大きな家だった。  和風の日本家屋の雰囲気がたっぷりと残った、瓦屋根のある漆喰壁の門構え。  新しいとは言いがたいけど、おお……と感嘆したくなる。表札には “織部”と書かれていた。 「……駅からわりと近かったね」 「そうなんです。駅の方が後にできたらしくて。お爺ちゃんが家をここに決めたときは、格安だったんですよ」 .
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