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ポカン……と収の横顔を見る。すると収は、クルッとあたしを振り返った。
「な、陽香も来いよ」
「な、何」
収は手元にあったクリアファイルから、何かチケットを取り出す。
それは、学校の近くのカラオケボックスの半額チケット。あたしも、何度も行ったことがある。
「今日まで、15人以上有効なんだよ。そこでバイトしてるヤツから回してもらったの。普通じゃもらえないんだ、コレ」
「15人って……」
「生徒会の連中で、10人。役員のカノジョ持ち2人にも相手呼び出してもらって、今、12人なんだよ。坂田さんと斉木さんと陽香で、ちょうど15人なんだけどなー」
あたしが眉根を寄せると、坂田さんと斉木さんがくつくつと肩を揺らして笑い出した。
「そこ、結構いいとこだよね。半額はおいしいなー……」
「ああん。じゃあ坂田が行くなら、俺も行く」
ほぼ同意したような2人にうんうんと頷きながら、収はあたしを見る。
「お前、この状況で断るなよ。許さないぞ」
上機嫌そうだった収の顔が、厳しく引き締められる。
「……行くよ、行けばいいんでしょ」
乗ってみるしかないだろう、とあたしの中の何かがささやいた。
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