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「じゃあね。俺の邪魔しないでね」
収はそう言うと、門の中を覗き込んで、軽く手を振った。
その横顔が何だか男の子していて、ちょっとかっこよく見えることにイライラした。
たぶん、あの視線の先に“ちいちゃん”がいるのだろう。
……そこそこ仲がいい自分達と、接点がほとんどないあたしと坂田さんを、一緒にしないで欲しい……。
ちょっと、泣きそうになった。
だって。この前だって、いたたまれなくなって逃げちゃったのに……。
落ち着いて話なんて、できるわけないじゃない。しかも、他の人もいるカラオケとか。
口を尖らせて俯いていると、そばに人の気配がした。
「ちょっと、失礼……」
声だけで「あ」と思うより先に、その気配があたしの髪に触った。
坂田さんは、あたしの髪をさっと直し始める。硬直して動けずにいると、頭の上でふ、と笑い声が漏れた。
「急にごめん。でも、そんなに固くならなくても」
「あっ、いえ、すみません」
「佐久間と仲いいんだね。見てると兄妹みたいだ」
「はい、あの、小学生のときからずっと一緒で……遠慮がないというか、何というか」
「そう。俺も、あの騒がしいのとずーっと一緒なんだよね。悲しいことに」
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