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おずおずと顔を上げると、坂田さんはあたしの髪から手を離し、顔を傾けることでその方向を示す。
その先に、他の生徒会役員達ともう打ち解けている斉木さんの姿があった。
「さっき、あいつね、フラれたんだよ」
「え?」
「高2のとき同じクラスだった子に告白してきたんだけど、玉砕」
「そうなんですか? ……その割に、元気そう……」
「そういうヤツなんだよ。だから、ちょっと元気付けてやらないと……って思ってて。カラオケに誘ってもらって、助かったかな、なんて」
なるほど。
はしゃぐ斉木さんの後ろ姿からは、失恋したての哀愁……というものはあまり窺えないけど。
だったら、生徒会にあまり関係なくても行こうかな、っていう気になるのかも知れない。
一応この集団のリーダーである収のことを知っているのなら、話は早いだろうし。
「ちいちゃん、遅いっての」
「ごめんなさーい、会長。私、食べるの遅くて……」
校内から走ってきたらしい“ちいちゃん”が息を切らしながら門から出てきた。
……びっくりしてしまう程、普通の女の子。
地味でも派手でもなく、そう背の高い方ではないあたしよりも更に小さくて、小動物のような感じの女の子だった。
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