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言いながら、必死で我慢していたはずの涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
坂田さんの眉尻が、困ったように下げられる。
「坂田さんはもてるから、慣れてるかも知れないけど……!」
「……」
坂田さんの表情が、だんだん苦いものへと変わっていく。
滲んだ視界の中でも判るくらい。
それにも絶望の影が押し寄せる。
……あたし自身、この胸に過ぎるものを何ひとつ認めてないのに。
確かな言葉を思い浮かべてすら、いないのに。
終わった、と確信した。その瞬間。
「……ぷっ、あはっ、あはははは……! もうだめだ、ごめん、許して……! はははははっ」
坂田さんは額田先生の机に手をついて、前屈みになる勢いで爆笑し始める。
あたしはといえば、流れ落ちる涙を拭うことも忘れて、笑い転げる彼の姿にすっかり毒気を抜かれてしまった。
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