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……ちょっと面白くないな。今度佐奈さんに言ってやろうか。
とはいえ、佐奈さんには何も感じないのが不思議なところだ。
それが額田先生だけが感じた“特別”なところなんだろうけど。
心底どうでもいいことを頭の中に巡らせてしまった気がして、俺はふと織部さんを見下ろした。
「そういうの、額田先生の前で言ったら駄目だよ」
「え?」
「いじめられるから、色んな意味で」
カゴの中がだいぶ軽くなったのを確認して、きょとんとする織部さんに向き直る。
「はっきり言うとね、あの人サディストだから。面白いと思ったら、恥ずかしいところ全部突いてくるよ」
すると、ようやく意味が通じたらしく、織部さんは眉根を寄せた。
すごく嫌そうなその反応に、ちょっとホッとしてしまう。
「それって、あれですよね。ムチとかロウソクとかいらない感じの」
「そうそう」
「でもあたし、マゾじゃないので……」
また、もぞもぞと自分の中で笑い出したい衝動が動いた。
否定するあたり、理解が浅くて幼くて、やっぱり可愛らしい、と思ってしまう。
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