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……半分は好奇心を満たす為でもあったりする辺り、自分という人間の妙な器用さに溜め息が零れ落ちそうだ。
「Mっぽい人って、最初は否定してなかなか認めないんだよね。それが楽しくてつい、もっと弱味を探したくなるって言うか……」
すると、織部さんは目を見開いて俺を凝視する。そのまま、一歩後退った。
「……俺は額田先生ほど好奇心旺盛じゃないから、大丈夫だよ」
「や、あの」
「ん?」
「明らかに嘘でしょう」
「……」
どうして判ったの──と、思わずそう訊いてしまいそうになった。
織部さんは、俺を直視できなくなったとでも言うように、うろうろと視線を彷徨わせる。
定まらなさそうに見えたその瞳が、ぴたりと止まった。
その視線をこっそりと辿ると、“花と蛇”のパッケージ。日本のSM映画の金字塔だ。
いや。だから、そっちじゃないって……。
激しく否定したかったけど、ここで慌てたら説得力がないと思って、とりあえず諦めた。
「……高校生でも借りられるよ、それ」
「ちっ、違います! 観たくて見てたわけじゃ……!」
自分でも見当違いな一言だったとは思うけど、思わぬところを突かれたらしい織部さんは、顔を真っ赤にしてぶんぶんとかぶりを振った。
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