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子育てが優先だという瀬戸さんの髪は顔にかからないよう短く切り揃えられていて、メイクもあっさりしたもの。正直色気などというものは皆無だった。
何度かこの人に接客をしてもらった記憶があるから、初対面という気はしなかった。
はい、と返事をしながら視線をそちらに向けると、彼女は訝しげな表情を浮かべていた。
さっきのあくびを見咎められたのだろうか、と身構える。店のシャッターがまだ開いていないからいいか、というのは甘かっただろうか。
すると、瀬戸さんはとあるパッケージを手に俺のそばまでやって来た。
「これ、リクエストがあって入れたんだけど、どうなのよ」
ばっ、と突きつけられたパッケージを手に、俺は思わず眉根を寄せる。
──“変態島”……。
反応に困って曖昧に首を傾げると、瀬戸さんは楽しそうにパッケージを裏返した。
「5分に1回、変態が出てくるんだって。こんな面白そうなのが、どうしてリクエストしないと入らないようなマイナーな映画なのよねえ」
「5分に1回? どういう映画なんですか」
確かに派手なコピーに思わず反応すると、瀬戸さんは口を尖らせる。
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