拒否をしないこと。

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  「面白いのもあるんだけど、フランス映画は暗いし雰囲気だけ、っていうのが多いのよ。私、あんまり神経使って観たくないから苦手」 「まあ、ハリウッド物に慣れた日本人にはきついものがあるかもしれないですね」  うんうん、と頷くと、瀬戸さんは“変態島”を新作棚に並べる商品の一番上に戻した。 「観てみたいけど、今のも製作にフランスが入ってる。騙されるわ、きっと」  思い切り主観交じりの言葉に、肩を竦めた。  苦手だと主張する人に無理に勧めることほど無意味なことはない。  興味がある人は、苦手だと言いながらもとりあえず食べてみるものだと思うから。  俺だって、フランス映画の空気が何となく好きなだけであって、「ここがいい!」と断言できるほどではないし。  すると瀬戸さんは言いたいことを言い尽くしたのか、鼻歌を歌いながら作業に戻ったようだ。  人それぞれだな、なんて思いながら俺も手元の作業に戻った。  ずっと客として来ていたおかげで、棚の位置はだいたい把握している。  巡回するルートをぼんやり頭に描きながら、返却されたDVDを分けて、カゴに入れた。 「戻してきます」 「うん、じゃあ私シャッター開けておくわ」 .
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