拒否をしないこと。

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   俺の顔を見てニコッと笑うと、瀬戸さんは有線のスイッチをバチンと弾いた。  そのまま、流れるような動作でパチン、パチンと店内モニターの主電源のスイッチも弾いていく。  長く勤めているからこその動きだな、と思いながら俺はカウンターを出た。  バイトの初日に、恥をかきたくなければ普段から“お客さん”と言わずに“お客様”と言う癖をつけていなさい、と店長に言われた。他にも、色々あるけど。  仕事とのメリハリをつけて使い分けているつもりでも、ちょっとしたことで迂闊に普段の言葉遣いが出てしまうものだ、とのことだった。言われてみれば、確かに。  いいことを教えてもらったとばかりに、店長の言ったことを実践することにした。  いらっしゃいませ、と瀬戸さんの声が遠くから聞こえてきて、お客様が入ってきたのだと判った。  まだ半分ほど残っているカゴの中を確認して、俺はのれんをくぐり18禁コーナーを出る。  AVを棚に戻しているところで、お客様と遭遇などしたくない。だから、先に戻すことにしていた。  フランス映画のコーナーを横切りながら、俺はあることを思い出す。 .
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