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そういえば、ここで織部さんが俺達を覗き込んでいたっけ。
覚えている。あのとき俺は、あれを借りて帰った。
軽く視線を上げると、そこにまだ“ベティブルー”がある。
あのとき偶然目に入って──ああ、まだ観てなかったっけ、と思ったんだ。
……別に未練というわけではなかったけど、愛美さんが一度観て欲しい、って言ってたな……ということを思い出したから。
俺の中で愛美さんと言うひとは未だ特別な位置にいる。
そりゃあ、あれだけ焦がれたひとなのだから当たり前なんだけど。
特別と言ったって、今も思い出すだけで胸が疼くとか、そういったことは全くない。
恋と、戯れ。
そういうものを同時に成立させることのできるひとがいるものなんだな、というか。
人生で初めてそういう女のひとと深く付き合った、というのもあるし。
彼女との間にあったことを思い出すと、“ああ、こういうことだったのかな”って改めて認識させられることが未だにあって。
何だろうな、こういうの。一番記憶が鮮明な恋愛ではあるけど。
“ベティブルー”のパッケージを眺めながら、愛美さんがこの映画を無視できなかった理由が判る気がするな、と思った。
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