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「どうしてここでバイトを?」
俺が棚にDVDを戻す動作に合わせてついてきながら、織部さんは首を傾げる。
ここで働くということを彼女に教えたのは、俺だ。
あの日、保健室で俺が爆笑してしまったのをきっかけに、俺達の間に漂う空気がずいぶん和やかになった。
男のきょうだいがいる割に、男との会話に慣れていなさすぎな織部さんが可愛らしくて、つい笑ってしまったんだけど。
男との会話、なんだからきょうだいの有無は関係ないだろうか。
年齢が離れすぎているせいもあるんだろう。異性の生々しさというのをあまり知らない子なんだということが、俺の中ではっきりした。
彼女をこのまま放っておけば、最初に感じたおせっかいな心配はきっと的中してしまうだろう。
だったらつかず離れずで、異性とのやりとりを慣らしてやろう、と思った。
俺にしては、珍しいくらいのおせっかい。
最優先にして気遣わなければならない相手なんて今はいないし、長倉さんが付きまとってくることももうないだろうし。
大学生活が始まったらどう転がるかは判らないけど、俺のことだから女っ気のない生活が惰性で続くだけなんだろうな、と思った。
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