その目がいけない。

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   ──なんで?  自動ドアが開くや否や、飛び込むようにして入ってきた彼女の顔を見て、たぶん俺は目を丸くしたんだと思う。  我に返ったように、ハッと俺から顔を背けると、織部さんは準新作のコーナーへと消えてしまった。  なんで、泣きそうな顔してるんだ?  バイト中でなければ、すぐに問いただすのに。  妙に冷静な自分のそういう思考回路にはとっくに慣れていて、俺は無理に織部さんの消えたコーナーを覗き込もうとはしなかった。  辺りを見回し、今すぐカウンターにやってくるお客様はいなさそうだ、と確認する。  俺はフロアに背を向けると、おもむろにそこにあるモニターのスイッチをパチンと切り替えた。  白黒画面のそれは、防犯カメラの映像。  一応、店内をざっと見てから──俺は目当てのコーナーにスイッチを切り替えた。  何を探すでもなく、織部さんがうなだれている。  たぶん、今日の彼女のカバンには古い映画のビデオテープが入っているはずだ。  いつもの彼女なら、真っすぐにここへ返しに来て、また何か探し始めるところなのに。  うなだれて、一歩も動く様子のない織部さんを見ながら、何があったんだろう、と首を捻った。 .
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