その目がいけない。

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  「やだー、同僚が女子高生を覗いてる。通報しなくちゃ」  声をひそめた瀬戸さんが、ドン、と思いきり背中に体重を預けてくる。  一瞬めちゃくちゃ驚いて、ビクッとしてしまった。  慣れると、瀬戸さんは実に人懐っこい女性だった。  誰にでもこうだから、結婚前はよく旦那に叱られた、と言っていた。  一見まったいらな瀬戸さんの胸は、こうされると意外とあるな、と思わされる。  逆セクハラだと思うんだけど、こういうの。 「違いますよ。覗きとか、冗談じゃない。友達なんです」 「ああ、いつものあの子?」  纏わりつく瀬戸さんの腕を鬱陶しそうに振り解くと、彼女はふうん、と一緒になってモニターを覗き込んだ。 「また、何か借りに来たの?」 「そうかも知れないけど……今日はとりあえず返すものがあるはずなんですけどね」  織部さんの丸い頭のてっぺんを、瀬戸さんといっしょに眺める──変なことをしているような気になってくる。  いたたまれなくなってスイッチを切り替えると、隣で瀬戸さんがぷぅっと頬を膨らませた。 .
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