その目がいけない。

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   瀬戸さんは年齢的には大人だけど、経験上それらしい振る舞いを心得ているだけで、中身はイタズラ盛りの子どもみたいなところがある。  まあ、俺が相手だと気張らなくていいから楽なんだそうだけど。 「あ」  瀬戸さんが、織部さんに声をかけているのが見えた。  カウンターを空にして止めに行くわけにもいかず、俺はまた溜め息をつく。  どうしてこう、俺の周りには空気を読めないというか、あえて読まない大人ばかりなんだろう。  その中に、高校の保健室の主が含まれるのは避けようのない事実だった。  年下の人間をからかってニヤニヤするだなんて、趣味としては悪すぎると思うんだけど。  その標的になるのが俺だけならまだいいけど、織部さんは何かと敏感な子だし、大人達の振る舞いがあまりにも目に余るようなら、注意しないと──。  そんなことを考えて、天井を仰ぐ。  ちょっと眩暈がするこの感じは、嫌いじゃないけど。  どうせならもうちょっと官能的な場面で起こしたいところだ。そんな相手もいないけど。  すると、準新作のコーナーから瀬戸さんが織部さんの手を引いて出てきた。 .
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