その目がいけない。

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   妙に明るい表情の瀬戸さんは、いいオモチャを見つけたとばかりに輝いている。やけに腹が立った。  一瞬その理由さえ判らなくて、思わず眉をひそめる。  瀬戸さんの影になって見えなかった織部さんの顔がちらりと見えた。  俯いた織部さんの表情を見た瞬間、ものすごくいたたまれない気分になってしまう。  ──ああ、そうか。  瀬戸さんに対して、瞬間湯沸かし器のように腹を立ててしまったのは。  織部さんのあとを追って、その手を掴みたかったのは自分だからだ。  きっとカウンター越しでは何も話せないだろうから、夜にでも、メールか電話で訊けばいいか、と思っていた。  バイト中でさえなければ俺はすぐに、どうしたの、くらい訊いていただろう。  それくらいには気にしている女の子だから。こういう言い方は好きじゃないけど。  自分がしたかったことを“けしからん大人”である瀬戸さんがアッサリやってしまったことに対して腹が立ったんだろうけど……。  だって、バイト中なのは瀬戸さんも同じだからだ。  瀬戸さんがやってしまったなら、自分がそうすればよかった──なんて思うだけだ。  突発的に怒りの感情が湧いてきたことには納得できたはずなのに、釈然としない。 .
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