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「色々は、色々だよ。今織部さんが考えたようなこと、全部」
「なっ、何も考えてませんよっ!」
その声が、何か思い浮かべていたのであろうことを充分物語っている。
まあ、俺が考えるようなことに比べたら可愛いものだろうけど。
「それとも、その色々の内容を言わせたいの? 俺に」
「そ、そういうわけじゃ……」
相手が何を言い出すか、なんてことを一切想像していないことがあからさまな織部さんの反応。
それが本当に可愛くて、彼女が10時までに帰らなければならないという事情がなければ、このまま俺の部屋に連れて帰りたいくらいだった。
連れて帰ってどうするか……なんてことはそれができる状況になってから考えたいところだけど。
すると、後ろで織部さんが軽く身じろぎした。背中のやわらかい感触に集中してしまう。
「……あの、あたし……坂田さんに訊きたいことがあって……」
「うん?」
背中で、織部さんが息を飲むような気配がした。
「けど……」
こつん……と、彼女の額が俺の背中に預けられる。
遠慮がちなその仕草に、ドキッと心臓が跳ねた。
……どうしてこう、予想外のことばかりするんだろう、この娘は。
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