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2度目も、奪うようにして口付けてしまった。
時々俺は、自分のことが面倒で仕方なくなることがある。
行動にはいちいち理由や理屈が必要になるからだ。まったく10代の若者らしくないこの性分が、足枷になることもある。
悪いことを回避する代わりに、絶好の機会を逃しやすい……そういうことだと思っていた。
けれど、織部陽香に対してだけは様子の違う自分に気付いた。
自分がこの身体で経験してきたどの恋愛とも違う気がした。
彼女のことを可愛いな、と感じた瞬間、普段と何も変わらないはずなのにどこか迂闊になる自分がいる。
好きだ、なんて口に出すのが恥ずかしかった。
彼女に対して抱いている感情はきっとそういう類のものでしかないのに、頑なにそれをハッキリと言葉にしようとしない自分がいて。
引っぱたかれた、あの雨の日だってそうだ。
この娘は俺のことを意識してるんだな……と感じた瞬間、悪い気が全然しなくて──いや、むしろ嬉しくなってしまって。
衝動に負けて彼女にキスを落とした瞬間、その口唇のやわらかさが気持ちよくて、その一瞬の間に感じたことが全部吹っ飛んでしまって……怒られる羽目になった。
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