繰り返すように輪る。

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   俺は、織部さんの緊張と羞恥心でいっぱいの瞳を見下ろしながら、なるべくこの胸の昂ぶりを悟られないように、口を開く。 「織部さんのことが、好きだからだよ」  ふと時間を確認すると、10時まで10分を切っていた。  前置きが長すぎたかな……と思ってから、ふっと笑みが漏れる。  手放したくない時間ほど、駆け足の如く早く過ぎ去ってしまうものなのかも知れない。  それを実感したのは初めてだった。  真っ赤になって何も言えずにいる織部さんを見下ろして、彼女が自転車で来ていることを少し残念に思った。  彼女は自転車を押しているから、その手を握れない。 「織部さん」 「え?」  弾かれたように急に顔を上げた織部さんの口唇にもう一度キスしたいのを我慢して──彼女の手からハンドルを奪った。  きょとんとする彼女を尻目に自転車に跨り、俺はニヤリと笑う。 「手前まで送る。後ろ、乗って」 「え、でも……」 「ちょっとだけ。ひとりで帰したくないから」  ここであっさり別れる……というのは、勝手だけどはなから選択肢にない。 .
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