好きです、好きなんです

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   これの、どこが意地悪なの……。  まだ慣れていないことの渦中、あたしはぼんやりとそんなことを思った──瞬間。  ぐいと抱き寄せられて、半開きの口唇をそのままに、坂田さんがあたしの首筋に顔をうずめる。  初夏の匂いがもうそこまで来ているこの季節、あたしは今日汗をかいたりしなかっただろうか、と。  急にそんなことを思い出して、身じろぎする。 「や、あ……っ」  ひんやりと冷たい口唇が、耳たぶの裏側に押し付けられた。  自分だってめったに触らないそんな場所に、ひとの口唇が触れる。  ぴちゃ、と湿った音がして、思わず背中をしならせた。  妙に甲高い声が漏れて、ゾクンと背筋が伸びる。  クッションを敷いているのにお尻の辺りがなんだか急にむず痒くなって、慌ててかぶりを振った。  そうすると、抱えるように頭を支えられ、坂田さんはあたしを自分の身体に密着させる。  重心を失って、彼の胸の中に倒れ込んでしまった。 「さ、さか……た、さん」 「ん」  やめてくれるのかと思えば、彼はあたしの長い髪をひとまとめに掴むようにして、半ば乱暴にかき上げた。 .
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