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これまで持っていた佐久間のそういうイメージと、今目の前にいるボロ雑巾のように疲れ切った男のイメージがあまりにかけ離れすぎていて、俺はこっそり眉根を寄せる。
「……ないこともないけど……どうしたの。何かあった?」
佐久間はゆっくりと顔を上げて、再び俺の顔を見る。
眼鏡の奥の切れ長の瞳が細められ、口唇は泣くのを我慢しているようにぎゅっと結ばれていた。
「……これ……」
散々迷ってから、佐久間はカバンの側面ポケットから、何かを取り出す。
佐久間の手の中にあるものが街灯に照らされた瞬間、俺は思わずえっと声を上げてしまった。
それはあちこちひび割れて、壊れてしまった携帯電話だった。
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