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「忘れたか。卒業式では玉砕したけど、俺とめぐみちゃんはもともとメル友なんだよ!」
話題はお前のことばっかりだけど、と急に斉木の声が小さくなる。
「まだ、諦めてなかったんだ?」
「1回や2回フラれたくらいで、諦められるものなら恋とは呼ばないことにしてる」
「それは……言い寄られる側には迷惑だろうね」
てへ、と肩を竦めて笑うと、斉木は急に真面目な顔になる。
「……めぐみちゃんさ、就職したじゃん。で、春から一人暮らし始めてるんだけど」
「ふーん」
フラれた割に、西川さんの近況にやたら詳しい。
斉木は奥手だけど、その割にうまくやってるようだ。
「最近、おかしいんだってよ。下着ドロボーに遭うって」
「そんなことするやつ、まだいるんだ」
神妙な顔つきで、斉木は頷いた。
「でさ、めぐみちゃん、男友達って俺とお前くらいしかいないじゃん? どうしようって、俺に相談してくれた」
「……まあ、そうだろうね。俺、彼女とメールなんてほとんどしてなかったから」
その割に、付き合う前から陽香には実にまめにメールを返していたことを省みて、現金な自分をちょっと反省した。
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