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「で」
「うん?」
「坂田がルンルンな理由は、聞かせてもらえないの?」
やたら真っすぐな目で見られて、一瞬言葉に困った。
気のせいだと思いたいけど、また背中に視線の矢が刺さっている気がする。
斉木がこういう顔で俺を見るから、あらぬ誤解を受けるんだと思う……。
「……ルンルンって程でも……」
「いいや、嘘だ。俺には判る。今の坂田の背景には、赤い大輪のバラが咲き誇っている。この前見かけたときにはそんなもの、なかった。枯れ木しか」
大輪の薔薇って、昔の少女漫画か。
枯れ木という言葉に少し苛立ったけど、スルーしてやることにする。
「……今付き合ってる子がいるけど。それだけだよ」
「ホントかよ!」
ガツガツとカレーを口に運びながら、斉木は好奇心でいっぱいの目を俺に向けた。
「どんな子」
「今、高3の女の子」
「へえー、年下って初めてじゃないの」
俺の恋愛事情をなぜかよく把握している斉木は、さらっとそう口にする。
もぐもぐと口を動かしながら、かと言って汚い食べ方というわけでもない斉木は、ぐいっと水を飲んだ。
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