おりこうさんな君。

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  「佐久間」  その頼りなさそうな肩をポンと叩いてやると、佐久間はビクッとして振り返る。 「……あ、な、何だ……坂田さんか……」 「今帰り? 何してんの、こんな時間まで」 「いや……ちょっと、あって……。あ」 「?」 「陽香と付き合い出したそうで。おめでとうございます」 「え? あ、ああ……ありがとう。そっちこそ、後輩の女の子とうまくいったみたいで、おめでとう」 「ああ……ハイ、どうも」  佐久間は疲れ切った瞳で俺をじっと見つめると、迷ったようにアスファルトに視線を落とした。 「……坂田さん」 「うん?」 「過去を、消しゴムとか修正液で消したい、って思うこと、ありませんか」  足元を見つめる視線は、疲れ切っているだけでなく、どこか虚ろだ。  頭痛持ちでよく保健室にやってきていたとはいえ、佐久間収という男は実に明るくて、快活な男だ。  斉木みたいなマイロードまっしぐらな人間の扱い方も上手だし、有能という文字がそのまま生きて歩いているような。 .
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