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判らない、と。
恥ずかしがってそればかり口にする彼女は、実にうそつきだと思った。
いや、厳密に言えば、きっと嘘ではないのだろう。
──頭で考えようとするから、判らなくなるんだよ。
そう言ってあげたかったけど、こういうのは、自分の身体で覚えていくものだと思う。
だって、黙って与えられたものに、人はなかなか価値を見出せないものだから。
……なんて小難しい理屈を持ってきたくなるけれど、つまるところ俺は、“自分が感じていることは何か”ということを彼女が目覚めるように理解する瞬間が楽しみで仕方がない。
織部陽香、というひとりの女の子が、芽吹いて花を咲かせるその瞬間に立ち会うのは、自分でありたい──とか、綺麗ごとすぎるかな。
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