おりこうさんな君。

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚  溺れるみたいに口唇を半分だけ開かせる彼女を感じながら、そこに舌を挿し込みたくなった。  けど、今のところ、それはしない。  キスなんて口唇と口唇が触れた瞬間、それを動かして自然と舌が彷徨い出すものだという認識があった。  けど、それはいわゆる経験者の俺側の勝手な常識で。  初めてこの娘とキスをしたとき、衝動のまま舌で口唇を割って挿れてしまったことは、今でも鮮明に思い出せる。  あのとき彼女はひどく動揺した。  いきなり口唇を塞がれたことも……だったんだろうけど、あの暴れ方は挿入ってきた舌に驚いたから──そうに違いなかった。  そういうことをまったく知らない彼女。  わけが判らないうちに、あれよあれよと全部詰めてしまうのも悪くはないだろうけど、俺は心底性格が悪いんだろうな、と自分で思った。  俺のやることなすことすべてに動揺して、狼狽して──そういう仕草のひとつひとつをじっくり観察したい……という欲求は、彼女にとっては迷惑極まりないだろうから。  俺の胸のうちを知れば、いっそ一思いに全部済ませてください、とか言いかねない。  だから、ときどきにぶい男のふりをして、神経質なふりをして。じっくりと、見せてもらうことにした。  織部陽香という女の子の、その変化を。 .
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