氷山の一角、というもの

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   収越しに、そろ……と仁志くんを見上げると、ばちっと視線が合った。  仁志くんはあたしを覗き込みながら、収の足元をなぞるように指でぐるりと弧を描くと、そのまま手招きした。  ……収の足元を回り込んでこっちに来い、ってこと?  きょとんとしつつ、クッションを持って言われた通りにのそのそと四つん這いで移動する。  仁志くんの足元にたどり着くと、両肩をぐいと持たれ、彼の足の間に落ち着かされた。  ……え、え、え……。  すごく親密な感じがして、一気に恥ずかしさが押し寄せてきた。  すると、あたしがそこからいなくなった気配を感じ取ったのか、収がそこに改めて腰を下ろす。  何だ。このハッキリした図は。 「ごめん、ちいちゃん。俺、腹が立ってて……携帯も、勢いで壊しちゃって」 「い、いいんです。さっき、お母様の前で“彼女”って言ってくれたし……」  ……“お母様”?  あたし、仁志くんのお母さんを目の当たりにして、そんな言葉遣い、できるだろうか。  なんか……ちいちゃん、すごい……。 .
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