200人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうなんです。ホントに、つい何日か前にそんな話聞いたばっかりですよ。大した付き合いじゃないって、収もそう言ってて……」
「そっか」
爪を噛む、というより歯と爪を弾き合うような、仁志くんの仕草。
全然嫌味にならないそれをじっと見つめながら、あたしは仁志くんが何か言うのをただ待った。
「あ」
「ん?」
待っていたけど、ふと妙なことを思い出した。ちいちゃんと付き合いだした、と収から聞いたとき。
『よかったじゃない、おめでとう』
『ありがとう』
『……? で、なんでそんな嬉しくなさそうなの?』
『俺の……元彼女? に会ったから』
あのとき、つい自分のことでいっぱいいっぱいで、すっかり聞き流していたけど……。
「……そういえば、ちいちゃんと付き合いだしたっていう次の日、収、言ってました。元彼女に会った、って」
「何か、陽香に言おうとしてた?」
仁志くんのその質問には、かぶりを振った。
「ちいちゃんと付き合いだした、って話のインパクトの方が強くて……でも、元彼女の話をしたときだけ、すごく嫌そうで」
「そっか……まあ、普通、幼なじみの……ましてや女の子に、そんなこと言うわけないか」
「……?」
.
最初のコメントを投稿しよう!