氷山の一角、というもの

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  「収、何でメアド変わってるの?」 「え?」 「メール。送ったのに返ってきた」  あたしの言葉に収はしばらく考えて──ああ、と声を上げた。 「メアドは変えてない。でも拒否ってるかも。ごめん」 「なんで!?」  思わず前のめりになって訊くと、収はんん……と口を尖らせた。 「……最近、悪戯メールひどくてさ。昨日、何も考えずドメイン指定拒否したんだよ」 「え?」 「たまたまだよ。たまたま、ほんとに。頭に来て指定拒否したんだよ。たまたま、陽香とちいちゃんのドメインがそのメールと同じだっただけで……考えなしにそんなことして、ごめん」  慌て出した収の態度からして、少なくとも悪意があってそうしたわけじゃないことは判ったけど。  チラッとちいちゃんを見下ろした。 「……」 「ごめん、ちいちゃん。ほんとに」 「いえ……何か私、嫌なこと言ったりしたりしたのかなって……だから、よかった……」  言いながら、ちいちゃんの目にじわ……と涙が浮かぶ。 「わ! 勘弁! 泣かないで、お願いだから!」  ベッドから飛び降りるようにして床にへたりと座り込んだ収は、あたしの前を横切っていることも構わずティッシュの箱を掴んだ。 .
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