氷山の一角、というもの

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  「どうしようね……ちいちゃんさえよければ、今日いっしょに収の家、行ってみる?」 「いいんですか?」  驚いて目を見開いたちいちゃんに、あたしは頷いた。  ……だって、あたしはこの半年以上もの間、収がずっとちいちゃんちいちゃんと騒いでいたのを──やつがどれくらいこの小さな女の子のことを想っていたか、知っている。  突発的に、こんなふうに心配をかけてしまうことは、収にとって不本意なことのはずだ。  何かあったなら尚更──。  すると、あたしの携帯がポケットでブルブルと震えた。  マナーモードにしていたけど、2秒で止まったから来たのはメールだと判った。 「待って、メールが来た。収かも……」  一瞬目を輝かせたちいちゃんを見、携帯を開くと送り主は坂田さ……仁志くん、だ。  彼からのメールは嬉しかったけど、目の前のちいちゃんが気になって、複雑な気分になる。 “佐久間、来てる? 今、電話いいかな”  そう書かれたメールに、あたしは首を傾げた。 「仁志くんだ。収来てるかって……」 「陽香先輩の彼氏さんですか?」  収から聞いていたのであろうちいちゃんは、沈んだ表情のまま首を傾げる。 .
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