氷山の一角、というもの

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚ 「じゃあ俺は織部の担任に言ってくるから──ああ、5限の教科、誰だっけ」 「浜田先生です。英語の」 「判った。そっちも話してきてやるよ」  口の中のキャンディを噛み砕いて片付けながら、額田先生は少し億劫そうに腰を上げる。  もう来ていて、背もたれのない回転する椅子の方に座っていた仁志くんが、「すみませんね」と言った。額田先生は肩を竦めると、静かに保健室を出て行った。  保健室に駆け込んできたときの空気で、額田先生が何か仁志くんから聞いたところなのだろう、と判った。  仁志くんの顔を見るのは、一昨日彼の部屋に行ったとき以来で──。  たくさんキスをされて、恥ずかしかったことが嫌でも思い出される。  昨日、一応レンタル店を覗いたことは覗いたんだけど、ものすごく混んでいて仁志くんの顔さえ見えなかったから、そのまま帰ってしまったんだけど。  だから、仁志くんの神妙そうな表情で、浮ついてる場合じゃないって判るんだけど──。  少しでも近くに行きたい欲求と嬉しさが、どうしてもこみ上げてくる。  思わずニヤけてしまわないように、一瞬下唇を噛んだ。 .
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