氷山の一角、というもの

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  「……言って、欲しい……」  彼の目を直接見ることのできないまま、呟くように言った。  すると、仁志くんはパーカーの肩の位置を直しながら、あたしの顔を覗き込む。 「公園と、俺の部屋」 「え?」  顔を上げると、無表情の仁志くんがそこにいた。 「話をするなら、どっちがいい?」  ぱち、ぱち……と。  何度も瞬きをしてから、あたしは俯いた。 「……こ……」 「ん? 聞こえない」 「……ひ、仁志くんの部屋、の方……」  頭をもたげる何らかの圧力に負けて、やっとのことでそう言うと、仁志くんは肩を竦める。 「……じゃあ、陽香が来たいって言うから、仕方ないね。行こう」  いじめだ、と呟くと。  仁志くんは、「陽香の欲求を引き出してあげてるだけだけど」と涼しい声で返してきた。  さっきの不機嫌はどこに行ったの、という上機嫌さを伴って。 .
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