僕はそれを愚かだと笑えない。

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   1日が終わる直前で疲れているせいか、少し無防備になっている自分を感じた。 『だって、仁志くんの部屋で、って言ったのに結局話してくれなかった! ってさっき思い出して』 「また、キスばっかりしたからね。嫌だった?」 『……っ! そ、そういうこと、わざわざ……っ』  陽香がどんな顔をしてるかが安易に想像できてしまって、俺はクスクスと肩を揺らして笑った。 「……しょうがないだろ。俺の部屋に来るときは気を付けてって、言ったのに」 『……もう……』 「今日、気に入らなかったのはね。佐久間と陽香の長い歴史を感じちゃったから。それだけだよ」 『えっ?』  陽香が何やらブツブツ言っているのをいいことにサラッと告白してやると、彼女が途端に居住まいを正したのが判った。 『ひ、仁志くん、あの、』 「判ってるよ。佐久間のお母さんが勝手に思ってたことっていうのは」 『仁志くん……』 「けど、判ってても気分はよくないよな、ああいうこと言われると」 『ご、ごめんなさい……』 「何で陽香が謝るの。俺が勝手に嫉妬しただけだよ」  でも、と陽香は口ごもる。  無理もない。言いながら、俺だって自分で「何言ってるんだろう……」って思ったから。 .
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