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「寄らないで」
文字通り気分が悪くなって、初めて保健室のお世話になったあたしは、カーテンの向こうにいるであろうそいつに、そう言い放った。
窓際に立つ額田先生が、思わず苦笑するのが見えた。
相変わらず、その口にはキャンディを含んでいるらしかった。
「……だとよ。難しいお年頃だな、お姫様は」
カーテンの向こうで、そいつは重い溜め息を漏らす。
「何かあったのか? 陽香」
収の声を聞くまいと、両耳を塞ぐ仕草をして、布団の中に潜り込んだ。
あたしを見ているはずの額田先生が、クッと小さく喉を鳴らして笑う。
「何も聞きたくないし、何も話したくないそうだ。お前、生徒会室の方行ったら? 仕事、溜まってるんだろ」
「え……あ、はい、そうです、ね……」
どこか歯切れの悪い、聞き慣れた低音。
いつもと何も変わらないそれらすべてのことが、よけいあたしの神経を逆撫でする。
収と山崎さんが付き合っていたのは1年以上も前で──その、ハレンチな写真を撮っていたのも、その頃で。
山崎さんが収に未練があること以外はとっくに全部過去のこと。
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