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「……さて」
あたしを驚かせたかっただけらしい額田先生は、白衣から携帯を取り出した。どうやら時間を確認したようだ。
「織部、どうする。帰れるか? もう少し休んでいくか?」
……正直、喉の奥がチリチリする。
吐き気にも似ているけど、我慢できないというほどじゃない。
「帰ります……」
「送らなくて平気か? 1時間程待てるなら妹が迎えに来るから、車で送ってやれるけど」
「い、いえっ、そこまでは……!」
毛布をめくって身体を起こし、慌ててブレザーを羽織る。
額田先生は「そうか?」と大して疑問を持つことなく、また窓際に移動した。けれど、チラ……とあたしを振り返る。
「……? 何です、か?」
「いや……坂田のやつ、まだ手つけてないんだろうな、と思って」
「……は、い?」
「あいつ、あっちの方なかなか変わってるからな。気を付けるんだぞ」
妙に教師らしい態度と声でそう言うけど。
「額田先生」
「ん?」
「セクハラです」
「……お前に言うくらい、いいんじゃないの。坂田の女だし」
どこから聞きつけた……というのは愚問だと思う。
昨日、ここであたしと仁志くんを2人きりにしたのはこの人だし。
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